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大阪地方裁判所 昭和46年(わ)398号 判決

本店所在地

大阪市北区南森町二七番地の一

大倉建設株式会社

右代表者代表取締役

伊藤正司

本籍

愛知県渥美郡渥美町大字江比間字五字堤中八八番地

住居

大阪市旭区中宮町四丁目七五番地

無職(元大倉建設株式会社代表取締役)

川合三吉

昭和八年七月二六日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、検察官田辺信好出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人大倉建設株式会社を罰金三〇〇〇万円に、被告人川合三吉を罰金五〇〇万円に処する。

被告人川合三吉が右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人大倉建設株式会社は、大阪市北区南森町二七番地の一に本店を置き、宅地造成及び不動産売買等を業とするもの、被告人川合三吉は、昭和三九年一月一三日より昭和四五年五月三一日まで、右大倉建設株式会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人川合三吉は、被告人大倉建設株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、被告人大倉建設株式会社の昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が三五七、六六五、六三三円、これに対する法人税額が一二三、一〇七、四〇〇円であるのにかかわ らず、公表経理上架空の土地造成工事原価を計上し、土地売上げの一部を翌事業年度に繰延べする等の不正な方法により、右所得金額中二六四、六一六、五三〇円を秘匿したうえ、昭和四三年二月二九日大阪市天王寺区天王寺税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が九三、〇四九、一〇三円、これに対する法人税額が三〇、五〇六、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて同年度分の法人税九二、六〇一、三〇〇円を免れ

第二、被告人大倉建設株式会社の昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が五二二、三〇二、七七二円、これに対する法人税額が一七七、二〇六、〇〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正な方法により、右所得金額中一五五、七三三、九三三円を秘匿したうえ、昭和四四年二月二八日前記天王寺税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が三六六、五六八、八三九円、これに対する法人税額が一二二、七〇三、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて同年度分の法人税五四、五〇二、五〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠)

判示全事実につき

一、収税官吏の伊藤正司に対する昭和四五年六月二九日付質問てん末書

一、収税官吏河上他代作成の昭和四六年一月二一日付調査てん末書

一、大倉建設株式会社定款写

一、登記官鶴田純一認証の右会社登記簿謄本二通

一、被告人川合三吉の検察官に対する供述調書二通

判示第一の事実につき

一、北税務署長宮崎正郎認証の昭和四二年度分法人税確定申告書謄本

一、昭和四二年度分の再修正申告書写

一、収税官吏の三 一郎に対する質問てん末書

一、東川鴻之助作成の確認書

判示第二の事実につき

一、北税務署長宮崎正郎認証の昭和四三年度分法人税確定申告書謄本

一、昭和四三年度分の再修正申告書写

一、収税官吏の梅村義雄、土居一、兼田平一郎に対する各質問てん末書

一、北村成男作成の供述書

一、石島作成の確認書三通

一、井花伊一郎作成の確認書五通

一、清水卯一作成の確認書四通

一、山本忠八作成の確認書

一、小川利通作成の確認書

一、福島美代一作成の確認書二通

一、渡辺三次郎作成の確認書二通

一服部重良作成の確認書

一、収税官吏の被告人に対する昭和四五年六月二七日付質問てん末書

判示第一および第二の事実につき

一、収税官吏の落越光也に対する質問てん末書五通

一、落越光也の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の庭野亮一に対する質問てん末書六通

一、庭野亮一の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の佐藤令二、西上光磯、山田広治、伊藤広幸、鶴岡裕、桑原勇、田中延一(二通)、山本佐市(三通)、前田三治、井田恒隆に対する各質問てん末書

一、庭野亮一作成の確認書八通

一、大塚新次郎、中井恭子、河合久太郎、沢村銀一郎、河合岩男、久保朋子、瀬戸次雄、南庄生産森林組合作成の各確認書

一、前川利治郎作成の確認書三通

一、収税官吏原一雄外一名、同山田康司、同水野良博、同木脇厳、同佐川英雄、同石田雅俊、同田淵年男作成の各調査てん末書

一、収税官吏の被告人川合三吉に対する昭和四五年五月二八日付、同年六月四日付、同月一九日付、同月二二日付、同月二三日付、同年七月一一日付、同年一二月三日付、同月同日付、同月七日付各質問てん末書

一、同被告人作成の供述書および確認書

一、同被告人の検察官に対する供述調書二通

(法令の適用)

被告人大倉建設株式会社の判示各行為はそれぞれ法人税法第一五九条一項、一六四条一項に該当するところ、情状により同法一五九条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により各所定罰金額(判示各ほ脱額相当額)を合算した金額の範囲内で、同被告人を罰金三〇〇〇万円に処する。

被告人川合三吉の判示各行為はそれぞれ法人税法一五九条一項に該当するところ、同被告人は本件発覚後の昭和四五年五月被告会社の役員を辞任したのであるが、その後の宅地建物取引業法の改正(昭和四六年法律第一一〇号宅地建物取引業法の一部を改正する法律)により、同法六六条三号、五条一項二号、三号の適用を受けて、同被告人が被告会社の役員でなくなつても、大株主であつて、被告会社に対し取締役と同等以上の支配力を有する者と認められる以上、同被告人が懲役以上の刑に処せられると被告会社の宅地建物取引業の免許が取消されることになつたこと、すでに本件逋脱にかかる税金は全額納付済であること、その他本件脱税の動機、同被告人の家族関係、改悛の情、これまでの社会的善行等諸般の情状を考慮して所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により各所定罰金額を合算した金額の範囲内で、同被告人を罰金五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

(裁判官 梶田英雄)

右は謄本である

昭和四六年八月三日

大阪地方裁判所第三六刑事部

裁判所書記官 長尾一郎

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